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2020年5月27日 (水曜日)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する免疫がつくとはどういうこと? 免疫学講座3(抗体を産生するB細胞の抗原認識)

みなさん

前回はT細胞がウイルスをどうやって認識するのか、という獲得免疫の根幹をなす抗原提示について勉強しました。今回は、抗体を産生するB細胞がどのようにウイルスを認識し抗体を産生するのかについてお勉強しましよう。大学生に教えるような内容で書いていますので、読み返して反芻しないとわからなくなりますよぉ。T細胞がHLA拘束的にウイルスのタンパク質断片を認識するのに対して、抗体は、ウイルスやバクテリアのタンパク質はもちろんのこと、糖タンパク質や糖脂質にある糖鎖やDNAなどの核酸とも直接結合することができます。B細胞は、新型コロナウイルスのようなウイルスをどのように認識して抗体を産生するようになるのでしょうか。B細胞の分化過程は、T細胞の分化過程よりも証明されていない部分を多く残していますが、今考えられている大筋をお話ししますので、一緒に理解を深めましょう。

<B細胞のウイルス抗原認識>

リンパ液の流れに乗って、ウイルスがリンパ節内のB細胞領域(濾胞と呼ばれます)に侵入すると、そこに定住している濾胞樹状細胞という、前回の記事で書いた全身にいてT細胞に抗原提示する樹状細胞と違い、貪食能やHLA拘束的な抗原提示能をほとんど持たない樹状細胞により補足(くっつくだけです)され、そのウイルスタンパク質に特異的なIgMやIgDを表現したナイーブB細胞を刺激します(たくさんあるB細胞のうち、ウイルスタンパク質に特異的なIgMやIgDを表現したほんの数個だけが刺激されます)。別に、リンパ管や血管で循環するウイルスも、それに特異的なIgMやIgDを表現し、同じように循環しているナイーブB細胞に認識され、刺激されたB細胞がリンパ節のB細胞領域へ戻ったりまた出たりしています。このナイーブB細胞がウイルスタンパク質により刺激を受けると、B細胞は膜結合型のIgMやIgDを作る遺伝子からmRNAができる過程で、選択的スプライシング(Alternative splicing)により細胞膜と親和性を持った領域(細胞膜ドメイン:膜結合性部分)を失ったmRNAが合成されるようになり、その結果、可溶性のIgMやIgDが作られ放出されます。これがウイルスタンパク質により初期刺激を受けてから1週間をピークに、血中に特異的なIgMやIgDの抗体が放出される理由です(一次応答)。選択的スプライシングでは、一つのナイーブB細胞が膜結合型と産生型の両方のIgMやIgDを作ることができます。IgD型の抗体はIgM型よりも微量で、生体での存在意義さえ解明されていないんですが、IgMは面白くて、ヒトの場合放出される時は5量体(5個のIgM抗体が円形に繋がった状態)で放出されます。

B細胞領域で、濾胞樹状細胞に補足されたウイルスにより、IgMやIgDを表現した特異的なナイーブB細胞が刺激される際、前回書いたウイルスに特異的なTh細胞のサイトカインによる補助があると、抗原刺激とサイトカイン刺激の協調による強い刺激により、ナイーブB細胞は巨大な形質細胞(プラズマ細胞と呼ばれます)に形態変化させ激しく増殖すると共に、ナイーブB細胞の抗体遺伝子はクラススイッチという大変重要な遺伝子の再構成を起こし、一つの抗体に二つある抗原認識部位のフレキシビリティ(対応可能度)も高まり、ウイルスタンパク質により強い特異性を持ち、IgG型の抗体を産生する細胞に生まれ変わります(二次応答)。このB細胞の二次応答は、IgMなどが産生される一時応答よりも遅れて、10日〜2週間前後でピークになります。IgG抗体には、量の多い順にIgG1, IgG2, IgG3, IgG4というサブクラスがあり、IgG抗体に結合したウイルスは、マクロファージなどに貪食されやすくなったり、例えば新型コロナウイルスの気管支上皮細胞への感染に重要な部位に抗体がつけば、ウイルスは上皮細胞に侵入できなくなります(中和抗体)。このナイーブB細胞がプラズマ細胞に分化する過程は、リンパ節内のB細胞領域の中の、胚中心(GC: Germinal center)と呼ばれる微小環境で起こります(というか、激しいB細胞分化が起きたから胚中心ができたと言ってもいいかもしれません、異物の全くいない環境下で育てたマウスでは、リンパ節のB細胞領域に胚中心がありません)。

この3回の記事で、新型コロナウイルスなどのウイルス感染で、獲得免疫が重要な役割を担っているのが分かりますね。

もっともっと一緒に新型コロナウイルス感染で起こる免疫応答について勉強していきましょう〜

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