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2020年5月26日 (火曜日)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する免疫がつくとはどういうこと? 免疫学講座2(T細胞のウイルス抗原認識)

みなさん

今回は、免疫学講座2、T細胞のウイルス抗原認識です。体はうまくできたもので、自分の体に無い物質(外から入ってくるウイルスやバクテリア(細菌)のタンパク質、自分の細胞が制御を失って(無限の増殖能を獲得したがん細胞など)初めて出てくるタンパク質等々)は抗原と呼ばれ異物として認識され、T細胞の免疫応答における標的になります。今回は新型コロナウイルスなどのウイルスを抗原とした場合の獲得免疫のT細胞応答について一緒にお勉強しましょう。

<T細胞のウイルス抗原認識>

新型コロナウイルスが気管支などの呼吸器官の外側を覆う粘膜の物理的防御を破って体内に侵入した場合、一番最初に、全身に分布している樹状細胞(DC: Dendritic cell)やマクロファージがウイルスを食べ(貪食と言ったりします)消化します(DCやマクロファージもT細胞やB細胞と同様に骨髄の造血幹細胞から造られます)。侵入したウイルスの数が少なかった場合には、この貪食だけでウイルスが排除されることもあります。

重要なことは、DCやマクロファージは、異物を貪食する細胞であるとともに、貪食過程で生成したウイルスタンパク質の断片をT細胞に抗原提示(タンパク質断片に特異的なT細胞を刺激するということです)する大切な役目を持っています。前回の記事で書きましたが、胸腺から出てきてリンパ節や脾臓に留まっているまだ何もできないナイーブT細胞を抗原で刺激できる(この初めて受ける抗原刺激をプライミングと言います)のはDCだけです。このプライミングという刺激があってT細胞は初めて機能を発揮できるようになります。マクロファージはプライミング後の機能的なT細胞を抗原で再刺激できます。

DCがウイルスを貪食すると、動きが活発になり呼吸器官の局所からリンパ管に入り、近傍のリンパ節内のナイーブT細胞がいるT細胞領域に移動します。この移動の間に、DCはウイルスを消化する過程で造られるタンパク質の断片を、HLAのクラスI分子(HLA-A, B, Cという分子が知られています)およびクラスII分子(HLA-DR, DP, DQという分子が知られています)のポケットに入れ表出させます。DCのHLAクラスII分子とウイルスタンパク質断片の複合体は、それに特異的なT細胞抗原リセプター(TCR)とCD4分子を持つナイーブT細胞を刺激し、刺激されたT細胞は、ヘルパーT(Th)細胞というサイトカインを放出する役目を持つT細胞に分化します。DCのHLAクラスI分子とウイルスタンパク質断片の複合体は、それに特異的なTCRとCD8分子を持つナイーブT細胞を刺激し、刺激されたT細胞は、細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T lymphocyte(CTL)やキラーT細胞と呼ばれます)という感染細胞を殺すような役目を持つT細胞に分化します(抗原の認識は常にHLAと共に行われるので、これをHLA拘束性と言います)。HLAクラスI分子は全身の細胞が表出させています。一方HLAクラスII分子は、抗原提示細胞であるDCやマクロファージ(B細胞も少し持っています)しか持っていません。また、DCがナイーブT細胞をプライミングできるのは、共刺激分子というプライミングに必要な分子を持っているからです。

T細胞領域のたくさんいるT細胞の中で、DC上のHLAとウイルスのタンパク質断片との複合体で刺激される特異性を持ったほんの数個のT細胞だけが、爆発的に増幅でき、リンパ節を離れ、新型コロナウイルスの場合には、それに感染した呼吸器官の上皮細胞を見つけるために、全身の免疫監視体勢に入ります。ナイーブT細胞が刺激を受けて、機能性をもってリンパ節を離れるのに、おおよそ5日間くらいかかります。

次は抗体を産生するB細胞のウイルス抗原認識について、一緒にお勉強しましょう。

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