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2020年5月の14件の記事

2020年5月31日 (日曜日)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する免疫がつくとはどういうこと? 免疫学講座5(抗体の交差反応性とB細胞の長期記憶)

みなさん

5月13日の記事でね、2002年から2003年にかけて流行ったSARSウイルス(正式名称名称SARS-CoV: この記事ではSARSコロナウイルスと言いますね)に感染して回復した人は、今回のSARS-CoV-2(COVID-19感染症の原因ウイルス: この記事では新型コロナウイルスと言いますね)には感染しないんじゃないかなぁ〜なんてことを書きました。SARSコロナウイルスと新型コロナウイルスとはタンパク質の相同性が高いですからね。免疫学者なんてこんなことをいつも考えているんですけどね。大変興味深い論文が5月18日にnatureから出ましたよ

5月27日の記事で、B細胞は一つ一つの細胞が、違う結合性(特異性)を持つ抗体を放出すると書きましたね。ウイルス感染から回復した人は、特異性の違う抗体を産生するたくさんのB細胞の中で、ウイルスやウイルス感染細胞の活動を阻害する抗体を産生するほんの数個のB細胞が増えているわけですね。しかもウイルスに刺激を受けたB細胞は記憶細胞となり、何十年にも渡り維持されます。natureの論文で著者らは、SARSコロナウイルスに感染して回復した人からB細胞を取ってきて、そのB細胞を不死化(死なないようにがん化させます)させて、25個の異なる不死化B細胞から放出される特異性の異なる25種類の単クローン抗体(不死化させた1個のB細胞からは1種類の抗体が放出されます。これを単クローン抗体と言います)を取ってきて、その新型コロナウイルス自体やその感染細胞に対する結合性や、新型コロナウイルスの感染性への影響を観ています。結果は、一つの抗体が、SARSコロナウイルスばかりでなく、新型コロナウイルスの上皮細胞への感染を中和する抗体(4月28日の記事に書きましたが、SARSコロナウイルスも新型コロナウイルスも、表面にあるスパイクタンパク質が上皮細胞のACE2というタンパク質にくっついて上皮細胞内に侵入するのですが、一つの抗体は両方のウイルスのスパイクタンパク質に結合して、ウイルスが上皮細胞に侵入できないようにする阻害性がある抗体だということです)であり、その他の3~4個の抗体は、新型コロナウイルスに感染した上皮細胞を認識する抗体であり、これら全ての抗体が強調すると、新型コロナウイルスの感染低下に大きな影響を及ぼす、というものです。

面白いですねぇ、SRASコロナウイルスに感染して回復した人の中には、SARSコロナウイルス感染を防御する抗体を放出するB細胞が17,18年経った今でも維持されていて、それが、新型コロナウイルスの感染防御にも働くみたいですね。このように2種類のウイルスなどの異物に結合する抗体のことを、交差反応性があると言います。きっと、SARSコロナウイルス感染で回復した人は、新型コロナウイルスに第一波でも第二波でも第三波でも感染しないでしょうね。

まだまだたくさん一緒に勉強しましょう。

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2020年5月29日 (金曜日)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する免疫がつくとはどういうこと? 免疫学講座4(ウイルス感染局所のT細胞応答)

みなさん

なんだか、また少し新型コロナ感染が、ぽっぽっと観られるようになりましたね。まだそんなに強いウイルスじゃないだろうけど、まぁ人の多い所に行くような時はまだまだ気をつけた方が良さそうですね。私は、自分のブログをパソコンでしか書かないし、記事を更新してもパソコンでしか観ないんですけどね。初めて自分のブログを携帯で観てギョッとなりました。このブログをパソコンのブラウザで観ると、背景を暗い色にしているので、薄い黄色なんかの文字はいい感じで読めるんですけど、スマホとかで白い背景で観ると、薄い黄色の文字部分は… こりゃー読めません。すみません。気がつかなくて… 今更どうにもならないけど… 知りたい見出しの記事があれば、どうかパソコンのブラウザで観てくださいね。今日は全部読める色で書きまする…

これまでの3回の記事で、T細胞やB細胞のウイルスに対する獲得免疫応答が、だいぶ解ってきたんじゃないですかね。T細胞のウイルスタンパク質に対する特異性を決めているのは、HLA(Human Leukocyte Antigen)クラスI分子(体の細胞のほぼ全てが出している)とクラスII分子(DCやマクロファージ などの抗原提示細胞だけが出している)でしたね。ヒトではクラスI分子にはHLA-A, B, Cがあって、クラスII分子にはHLA-DR, DP, DQ分子があって、マウスではクラスI分子にはH-2K, H-2D, H-2L分子があり、クラスII分子にはH-2A (I-A), H-2E (I-E)分子があります。これらの分子は総称してMHC(Major Histocompatibility Complex: 主要組織適合性複合体)と呼ばれています。他人(同種異型を学問的にはアロと言います)の血液や臓器の移植では、T細胞による拒絶反応が起こるんですが、35年くらい前に一番強い移植拒絶に関わる分子を特定し、それをMHCと名付けたわけです。それで、30年くらい前に、初めてHLAクラスI分子の結晶構造解析が行われたんですね。懐かしいなぁ、横浜で行われた国際学会で、解析したチームが結晶を持ってきて、みんなに自慢気に見せてました。その解析結果で、HLAクラスI分子は、細胞の外に出ている部分が3つのドメインという異なった構造部分からなり(一番外からα1, α2, α3ドメインと名前がついています。α3の次が細胞膜を貫通するドメインで、その次に細胞質内のドメインと続きます)、α1とα2ドメインからなる構造は、明らかに何かが入りそうなポケット構造になっていることが明らかとなりました。MHCクラスI分子のα3ドメインには、β2ミクログロブリンというタンパク質がくっついていて複合体になっています。一方HLAクラスII分子は、細胞外にα1, α2ドメイン、その次に細胞膜ドメイン、細胞質内ドメインとつづくα鎖と、細胞外にβ1, β2ドメイン、その次に細胞膜ドメイン、細胞質内ドメインとつづくβ鎖とがくっついた複合体で、DCやマクロファージの上に出ていて、その一番外側のα1とβ1ドメインがポケット構造を作っています。ウイルスを食べたり、ウイルス感染を受けた細胞上のMHCクラスI分子とクラスII分子のポケットには、ウイルスタンパク質の断片が入り、それをT細胞はMHCと共に認識するというのがわかったのは、今から25年くらい前のことです。

気管支の上皮細胞にウイルスが感染すると、上皮細胞はウイルスタンパク質断片入れたHLAクラスI分子を表現させると共に、警告としてのサイトカインを放出します。この警告サイトカインにより、ウイルスを食べて、ウイルスタンパク質断片をHLAクラスIおよびクラスII分子のポケットに表出させたマクロファージが、ウイルス感染を受けた上皮細胞の周りに集まってきます。一方、ウイルスを食べた後、ウイルスタンパク質断片をHLAクラスIおよびクラスII分子のポケットに表出させたDCは、リンパ節内でウイルス特異的ナイーブT細胞を刺激し、刺激されたT細胞は分化と共に活性化し、キラーT細胞やヘルパーT(Th)細胞となり、リンパ節を離れ、血液やリンパ液に乗って全身を巡るようになります。ウイルス特異的なTh細胞が、気管支の上皮細胞周辺に集まってきたマクロファージ上の、HLAクラスII分子に乗っかったウイルスタンパク質断片を認識すると、キラーT細胞を助けたり、マクロファージをさらに呼び寄せたりするような強いサイトカインの産生が起こります。ウイルスに感染した上皮細胞に出ているHLAクラスI分子のポケットに入ったウイルスタンパク質断片をキラーT細胞が認識すると、キラーT細胞は細胞を殺す物質(グランザイムBという物質が知られています)を感染細胞に注入し、感染細胞を死滅させます。

分子の詳しい記述が出てきて、難しくなってきましたが、第一話から何度も読めば必ず理解できますから、これからも一緒に新型コロナウイルス感染症で起こる基礎的な免疫応答を考えていきましょうね。

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2020年5月27日 (水曜日)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する免疫がつくとはどういうこと? 免疫学講座3(抗体を産生するB細胞の抗原認識)

みなさん

前回はT細胞がウイルスをどうやって認識するのか、という獲得免疫の根幹をなす抗原提示について勉強しました。今回は、抗体を産生するB細胞がどのようにウイルスを認識し抗体を産生するのかについてお勉強しましよう。大学生に教えるような内容で書いていますので、読み返して反芻しないとわからなくなりますよぉ。T細胞がHLA拘束的にウイルスのタンパク質断片を認識するのに対して、抗体は、ウイルスやバクテリアのタンパク質はもちろんのこと、糖タンパク質や糖脂質にある糖鎖やDNAなどの核酸とも直接結合することができます。B細胞は、新型コロナウイルスのようなウイルスをどのように認識して抗体を産生するようになるのでしょうか。B細胞の分化過程は、T細胞の分化過程よりも証明されていない部分を多く残していますが、今考えられている大筋をお話ししますので、一緒に理解を深めましょう。

<B細胞のウイルス抗原認識>

リンパ液の流れに乗って、ウイルスがリンパ節内のB細胞領域(濾胞と呼ばれます)に侵入すると、そこに定住している濾胞樹状細胞という、前回の記事で書いた全身にいてT細胞に抗原提示する樹状細胞と違い、貪食能やHLA拘束的な抗原提示能をほとんど持たない樹状細胞により補足(くっつくだけです)され、そのウイルスタンパク質に特異的なIgMやIgDを表現したナイーブB細胞を刺激します(たくさんあるB細胞のうち、ウイルスタンパク質に特異的なIgMやIgDを表現したほんの数個だけが刺激されます)。別に、リンパ管や血管で循環するウイルスも、それに特異的なIgMやIgDを表現し、同じように循環しているナイーブB細胞に認識され、刺激されたB細胞がリンパ節のB細胞領域へ戻ったりまた出たりしています。このナイーブB細胞がウイルスタンパク質により刺激を受けると、B細胞は膜結合型のIgMやIgDを作る遺伝子からmRNAができる過程で、選択的スプライシング(Alternative splicing)により細胞膜と親和性を持った領域(細胞膜ドメイン:膜結合性部分)を失ったmRNAが合成されるようになり、その結果、可溶性のIgMやIgDが作られ放出されます。これがウイルスタンパク質により初期刺激を受けてから1週間をピークに、血中に特異的なIgMやIgDの抗体が放出される理由です(一次応答)。選択的スプライシングでは、一つのナイーブB細胞が膜結合型と産生型の両方のIgMやIgDを作ることができます。IgD型の抗体はIgM型よりも微量で、生体での存在意義さえ解明されていないんですが、IgMは面白くて、ヒトの場合放出される時は5量体(5個のIgM抗体が円形に繋がった状態)で放出されます。

B細胞領域で、濾胞樹状細胞に補足されたウイルスにより、IgMやIgDを表現した特異的なナイーブB細胞が刺激される際、前回書いたウイルスに特異的なTh細胞のサイトカインによる補助があると、抗原刺激とサイトカイン刺激の協調による強い刺激により、ナイーブB細胞は巨大な形質細胞(プラズマ細胞と呼ばれます)に形態変化させ激しく増殖すると共に、ナイーブB細胞の抗体遺伝子はクラススイッチという大変重要な遺伝子の再構成を起こし、一つの抗体に二つある抗原認識部位のフレキシビリティ(対応可能度)も高まり、ウイルスタンパク質により強い特異性を持ち、IgG型の抗体を産生する細胞に生まれ変わります(二次応答)。このB細胞の二次応答は、IgMなどが産生される一時応答よりも遅れて、10日〜2週間前後でピークになります。IgG抗体には、量の多い順にIgG1, IgG2, IgG3, IgG4というサブクラスがあり、IgG抗体に結合したウイルスは、マクロファージなどに貪食されやすくなったり、例えば新型コロナウイルスの気管支上皮細胞への感染に重要な部位に抗体がつけば、ウイルスは上皮細胞に侵入できなくなります(中和抗体)。このナイーブB細胞がプラズマ細胞に分化する過程は、リンパ節内のB細胞領域の中の、胚中心(GC: Germinal center)と呼ばれる微小環境で起こります(というか、激しいB細胞分化が起きたから胚中心ができたと言ってもいいかもしれません、異物の全くいない環境下で育てたマウスでは、リンパ節のB細胞領域に胚中心がありません)。

この3回の記事で、新型コロナウイルスなどのウイルス感染で、獲得免疫が重要な役割を担っているのが分かりますね。

もっともっと一緒に新型コロナウイルス感染で起こる免疫応答について勉強していきましょう〜

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2020年5月26日 (火曜日)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する免疫がつくとはどういうこと? 免疫学講座2(T細胞のウイルス抗原認識)

みなさん

今回は、免疫学講座2、T細胞のウイルス抗原認識です。体はうまくできたもので、自分の体に無い物質(外から入ってくるウイルスやバクテリア(細菌)のタンパク質、自分の細胞が制御を失って(無限の増殖能を獲得したがん細胞など)初めて出てくるタンパク質等々)は抗原と呼ばれ異物として認識され、T細胞の免疫応答における標的になります。今回は新型コロナウイルスなどのウイルスを抗原とした場合の獲得免疫のT細胞応答について一緒にお勉強しましょう。

<T細胞のウイルス抗原認識>

新型コロナウイルスが気管支などの呼吸器官の外側を覆う粘膜の物理的防御を破って体内に侵入した場合、一番最初に、全身に分布している樹状細胞(DC: Dendritic cell)やマクロファージがウイルスを食べ(貪食と言ったりします)消化します(DCやマクロファージもT細胞やB細胞と同様に骨髄の造血幹細胞から造られます)。侵入したウイルスの数が少なかった場合には、この貪食だけでウイルスが排除されることもあります。

重要なことは、DCやマクロファージは、異物を貪食する細胞であるとともに、貪食過程で生成したウイルスタンパク質の断片をT細胞に抗原提示(タンパク質断片に特異的なT細胞を刺激するということです)する大切な役目を持っています。前回の記事で書きましたが、胸腺から出てきてリンパ節や脾臓に留まっているまだ何もできないナイーブT細胞を抗原で刺激できる(この初めて受ける抗原刺激をプライミングと言います)のはDCだけです。このプライミングという刺激があってT細胞は初めて機能を発揮できるようになります。マクロファージはプライミング後の機能的なT細胞を抗原で再刺激できます。

DCがウイルスを貪食すると、動きが活発になり呼吸器官の局所からリンパ管に入り、近傍のリンパ節内のナイーブT細胞がいるT細胞領域に移動します。この移動の間に、DCはウイルスを消化する過程で造られるタンパク質の断片を、HLAのクラスI分子(HLA-A, B, Cという分子が知られています)およびクラスII分子(HLA-DR, DP, DQという分子が知られています)のポケットに入れ表出させます。DCのHLAクラスII分子とウイルスタンパク質断片の複合体は、それに特異的なT細胞抗原リセプター(TCR)とCD4分子を持つナイーブT細胞を刺激し、刺激されたT細胞は、ヘルパーT(Th)細胞というサイトカインを放出する役目を持つT細胞に分化します。DCのHLAクラスI分子とウイルスタンパク質断片の複合体は、それに特異的なTCRとCD8分子を持つナイーブT細胞を刺激し、刺激されたT細胞は、細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T lymphocyte(CTL)やキラーT細胞と呼ばれます)という感染細胞を殺すような役目を持つT細胞に分化します(抗原の認識は常にHLAと共に行われるので、これをHLA拘束性と言います)。HLAクラスI分子は全身の細胞が表出させています。一方HLAクラスII分子は、抗原提示細胞であるDCやマクロファージ(B細胞も少し持っています)しか持っていません。また、DCがナイーブT細胞をプライミングできるのは、共刺激分子というプライミングに必要な分子を持っているからです。

T細胞領域のたくさんいるT細胞の中で、DC上のHLAとウイルスのタンパク質断片との複合体で刺激される特異性を持ったほんの数個のT細胞だけが、爆発的に増幅でき、リンパ節を離れ、新型コロナウイルスの場合には、それに感染した呼吸器官の上皮細胞を見つけるために、全身の免疫監視体勢に入ります。ナイーブT細胞が刺激を受けて、機能性をもってリンパ節を離れるのに、おおよそ5日間くらいかかります。

次は抗体を産生するB細胞のウイルス抗原認識について、一緒にお勉強しましょう。

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2020年5月24日 (日曜日)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する免疫がつくとはどういうこと? 免疫学講座1(一次リンパ組織と二次リンパ組織)

みなさん

このブログでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した主に免疫学的な観点からの記事を4月から書き続けていますが、書き始めた頃は、世界がこの感染症を危機として捉え、論文やら記事やらがどんどん出始めた時で、その急速な流れに押される感じで、基礎的な解説がほとんど無く記事を進めてきました。とにかく『サイトカインストームによる肺炎(全身性の炎症ですね)の治療に向かって欲しい』一心で、緊急性から『医療関係者や専門的な人達に理解されればいいや』なんて気持ちもあって… でも最近、いろいろな方が向学心から読んで頂いているのを知ったので、これから、第二波までの静寂期(こういう言い方があるのか分かりませんが。第二波がないことを祈りますが…)は、感染症学と結びつく基礎的な免疫学について少しずつ書いていこうかと思います。😃

このブログでは、これまでほとんど獲得免疫細胞のB細胞が放出する抗体についての記載はありませんでしたね。理由は、ほとんどの人が発症後に重症化せずに治癒する新型コロナ感染症では、治癒に自然免疫とT細胞による獲得免疫細胞が関係していて、抗体による免疫はほとんど関わっていないと考えられたためです。重症化した後回復した人は、きっと抗体も活躍した結果だと思いますが… 新型コロナ感染症を含めウイルスによる感染症ならなんでも、T細胞検査というのができれば一番いいんですが、そういう方向性にはなりませんね(5/19の記事のT細胞のクローン性を観るなど方法はあると思いますが。将来的にはウイルス感染症の検査法の一つになるんじゃないかな…)。

T細胞もB細胞も骨髄(骨の中心部分)の造血幹細胞を由来として、分化という性質変化の過程を経て造られます。簡単に言うと、造血幹細胞が胸腺という心臓の上の方にある臓器を通るとT細胞になります。胸腺は英語でThymusと言い、そこで作られるのでT細胞と呼ばれるわけです(骨髄や胸腺は一次リンパ組織と呼ばれます)。胸腺では、自分のタンパク質(自己)に反応するT細胞が除かれて出てきます、ですから、健康な人はそう簡単に自己免疫疾患のような病気にならないわけです。胸腺を出た時はまだ未熟なナイーブT細胞と呼ばれる何もできないT細胞なんですが、5/19の記事で書きましたが、この時既に、一個一個のT細胞は違うT細胞抗原レセプター(TCR)を持っていて(認識するタンパク質断片が一個一個異なるということです)、CD4という分子を発現していると、ウイルス感染細胞の認識でサイトカインという生理活性物質を放出するヘルパーT(Th)細胞になるように運命付けられた細胞として、CD8という分子を持っているとウイルス感染細胞やがん細胞を殺すキラーT細胞(細胞傷害性T細胞:Cytotoxic T Lymphocyte (CTL)とも呼ばれます)になることを運命付けられた細胞として、まずリンパ節や脾臓といった二次リンパ組織に留まります。

イムノグロブリン(Ig)はみなさんもご存知の抗体(Ab: Antibody)と呼ばれているものですがB細胞から造られます。B細胞は、鳥類のファブリキウス嚢(Bursa Fabricii)という器官で造られることが最初知られたためにB細胞と名付けられましたが、ヒトでは骨髄で造られます。IgにはIgD, IgM, IgG, IgA, IgE(IgAとIgEについてはずーっと後に話題にするかもしれませんが、しばらくは、IgD, IgM, IgGについて話します)などの型があって、最初は膜結合型のIgMもしくはIgDがB細胞の表面にあるのですが、ウイルスなのど異種タンパク質(抗原)の刺激を受けると、クラススイッチと呼ばれる遺伝子の再構成により、IgG型に変わります。それはまた詳しくお伝えしますね。B細胞もT細胞と同じく、一個一個異なるタンパク質などの分子(糖鎖や脂質さえも認識します)を認識する膜結合型のIgMやIgD(B細胞抗原リセプター(BCR)と言ったりします)を表現しており、自己反応性の危ないB細胞は、骨髄での分化の過程でその多くが除かれます(B細胞はリンパ節移行後も自己反応性のものが除かれています)。骨髄を出たB細胞は、まずリンパ節や脾臓といった二次リンパ組織に留まります。

ナイーブT細胞もIgMやIgDを表現したB細胞(ナイーブB細胞と呼ぶ人もいます)も、最初二次リンパ組織に集まりますが、そこではきちっと住み分けがされていて、それぞれ濾胞を形成し、それをT細胞領域やB細胞領域と呼んでいます。

本日はここまでね。またお勉強しましょう。

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2020年5月21日 (木曜日)

楽しかったなぁ〜 新しい感染症の勉強は。今回はただただ独り言…

みなさん

大都市も含め、新型コロナ感染症も、もうすぐ第一波は収束しそうですね…

第二波は必ずくるみたいにみんな言っていて、それが秋頃からなんてみんな確信をもって言っていて、スペイン風邪がそうだったから、みたいに説明しているけど… 私は感染症が専門ではないので、大学にいるいろんな研究者に聞いても、第二波はより毒性の強いウイルスになる、なんてみんな言うけれど、まぁ、ウイルスも変異を繰り返していれば、秋頃にはかなり強力になりそうなのはわかるけど、これから乾燥する冬の季節に入るオーストラリアとかニュージーランドとか、そういう南半球から第二波は始まって、それが秋頃に北半球に入ってくると言うけれど… 新型コロナ感染症に警戒しだした2~3月頃には、WHOも専門家も、湿度の高いジメジメした夏でもこの感染症は収まらない可能性が高い、なんて言ってたじゃない… でも、夏までにちゃんと第一波は収まりそうだから、やっぱり南半球で第二波は始まるのかな… 何だかわからないなぁ〜 新型コロナウイルスは変異を繰り返しながら、南半球のどこかの街でボッと火がついて、でも最初のうちはウイルスがまだ弱く数人単位の感染までで広がらず、これを何度か繰り返しているうちに、本当に強力なのが出てきて、どこかの街でボッと火がついたら、今度は隔離とかソーシャルディスタンスとか三密を避けるとかでは鎮火できなくて、それが第二波として南半球から北半球に蔓延するのかな… これからしばらくは南半球の街で起こる小さなボッを注意深く観察する必要がありますね。

免疫学的に観たら、本当楽しい勉強の日々でしたよ。マスコミによく出てくる有名な免疫学者の先生は、『この新型コロナは免疫が大変つきにくい』なんて何度も言っているけど… ほとんどの人は発症から1週間で、感染からだと獲得免疫が最も活動する10日から2週間でT細胞により治癒するわけだから、免疫はつきやすいですよ。ウイルスなんて、バクテリア(細菌)に比べたら、T細胞の反応性はもの凄いですよ。実験すればわかります。重症化する人なんて日本だと10%以下程度ですね… その中で重篤な症状に陥る人は明らかにほぼ全症例がサイトカインストームなんだから、T細胞がいなければサイトカインストームなんて恐ろしい急性の反応は起こりませんよ。私の専門はがん免疫学ですけど、がんの免疫治療でもがんに特異的なT細胞を移入する治療をした時だけ、サイトカインストームが起こる場合があり、それが最も恐ろしい副作用と言われているけど、IL-6の効果を無くすトシリズマブを投与するだけで、サイトカインストームはスッとなくなります。だからこのブログでもこの薬を一押しで何度も書いてきたんですけどね… T細胞がいなければ、免疫がつかなければ、サイトカインストームなんて起こりません。新型コロナ感染症では、T細胞による免疫がつくからサイトカインストームが起こっているんです。

そうそう、5月9日に記した私の新型コロナ感染症での免疫動態予測で、前回の記事では③のサイトカインストームが起こる機序だけが証明する論文がないと言いましたね。予測では、T細胞に攻撃された感染細胞の死骸から出てくる大量の剥き出しのDNAなどの核酸と、疲弊したT細胞の死骸から出てくる大量の剥き出しのDNAなどの核酸が、核酸センサーをたくさん持つ自然免疫細胞を強く刺激して、その結果としてIL-6を含めた大量のサイトカインが産生される、としていましたが、この考え方と同じ考えをしている研究者がいて、ちゃんと総説になっていました。私の予測した新型コロナ感染症での免疫動態は、実験で全て証明される日が近々来そうです〜

また、面白いことを発見したらお知らせしますね。

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2020年5月19日 (火曜日)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で、自然免疫(Innate Immunity)と獲得免疫(Acquired Immunity)はどのような活動をしているの? その3

みなさん

なんかやばいなぁ… 新型コロナが収束すると共に、本来の仕事をやる気がなくなってきました… ダメェだぁ… 私はね、昔から協調性が足りなくて、そのことで信じられないくらい上の人から怒られてきたのですね。今では、パワハラ認定だと思いますけど… まぁそんなことはどうでもいいですけど、いかん… この新型コロナ感染症では『本当なのかな』と首をひねるような記事も目にしますね。例えば、ロシアを代表するTass通信では、『新型コロナウイルスに一番感染しやすい人の血液型はA型で、その後O型、B型と続き、AB型の人が一番抵抗性がある』と言っています。本当かなぁ… 日本も、免疫学といえばある有名な先生がしょっちゅう出てきますけど、あらゆる文献を網羅すると『間違っているよなぁ』と思うことを多々発言しているし… マスコミの人は、新しい感染症のような学問的にまだ何もわからない未知のパンデミックでは、学者一人の意見を聞いて満足するんじゃなくて、自分自身でもいろいろ勉強して分別をつけられるようにした上で、いろんな学者の意見を聞いて、真実を抽出して欲しいですね。いかん、愚痴になってる… 😞

さて、前々回の記事では、新型コロナ感染症の病態と共に変わる免疫状態に関する論文を二つ紹介しましたね。

①の論文では、全身で起こっている免疫応答を調べていて、重症度の上昇と共に

A: 獲得免疫細胞のT細胞(サイトカインを産生するCD4という分子があるT細胞と、感染細胞を殺す役割があるCD8分子を持つT細胞について観ています)の数がどんどん減り疲弊マーカー(PD-1分子やTIM-3分子で観ています)を持つようになる。

B: ICUに入った感染者はIL-6のレベルが上昇するけれど、ICUに入らないで済んだ人は、IL-6レベルが上がらない。

と言っています。これらの結果は、サイトカインストームが重症化に特化した現象であると共に、重症化では獲得免疫細胞が死滅していくことを間接的に教えてくれます。

②の論文では、気管支の局所で起こっている免疫応答を調べていて、

C: 獲得免疫細胞で感染細胞を殺すことができるT細胞や抗体を産生するB細胞、さらには、自然免疫細胞で感染細胞を殺す役割を持つナチュラルキラー(NK)細胞がmoderate患者では増えているが、severe患者では劇的に減る。

D: 感染細胞やその死骸を食べ、IL-6などのサイトカインストームの原因となる炎症性サイトカインを強く産生する自然免疫細胞のマクロファージや好中球はsevere患者で増え、好中球を呼び寄せる役割があって、炎症に関係しないような自然免疫細胞のマクロファージは、moderate患者で多い。

E: moderate患者のT細胞は感染細胞に特異的なT細胞が多くを占めていると考えられる(クローン性が観られる)のに対して、severe患者のT細胞は、特異性が無さそうに見える(クローン性がない)。

F: moderate患者の細胞は炎症を調節する遺伝子の発現が高いのに対して、severe患者の細胞は、サイトカイン産生に関する遺伝子の発現が高い。

と言っています。さすが、Nature Medicineです。解析した結果から学べる点が多いですねぇ〜 CはAの結果に似ていますが、DやFとも併せて考えると、局所での感染細胞を殺す免疫応答は、発症から1週間くらいの穏やかな病態を示す時期にはきちんと機能していて、サイトカインストームに関係するIL-6などのサイトカインが激しく産生されないようにきちんと調節されていることがわかります。だからこの時期で治癒することもあるのですね。でも、重症化した感染者の局所では、もはや獲得免疫細胞は機能せず死滅して、代わりにサイトカインストームを起こす免疫破綻状態となって、調節が効かず、IL-6などのサイトカインの強い産生を促す環境に変化していることがわかります。

Eですけど、体にあるたくさんのT細胞は、T細胞抗原リセプター(TCR)というタンパク質でウイルス感染細胞であればウイルス由来のタンパク質を認識します。1個のT細胞には1種類のTCRがあり、体の中には計算上10の18乗個の異なるTCRを持ったT細胞がいて(実際は計算上の数よりは少ないT細胞がいます)、地球上に存在するほとんど全ての異種タンパク質はたくさんいるT細胞のどれかに認識されるようになっています。ですから、新型コロナウイルスに感染した気管上皮細胞は、たくさんあるT細胞の中の結合できる数個だけが認識することができ、その数個のT細胞が、感染した気管上皮細胞をTCRで認識すると、爆発的に増えて感染細胞を殺すんです(わずか数個のT細胞が増えたかどうかは、TCR遺伝子が同じものばかりになるかどうかで調べられます。これをクローン性と言います)。したがって、気管洗浄液中のT細胞にクローン性があるということは、気管の感染細胞を認識するわずか数個しかいないT細胞がきちんと増えていることを示し、クローン性がないということは、もはや気管上皮細胞を認識できるT細胞がいないという可能性が考えられるわけです。難しいですが、新型コロナ感染症で、発症から1週間くらいの穏やかな病態を示す時期に、特異的なT細胞がきちんと機能し増幅していることが、T細胞のクローン性を観るだけで予測できるのです。

ということで、5月9日の記事での新型コロナ感染症の病態変化における私の免疫動体予測では、①、②、④はほぼ当たっていたことになり、サイトカインストームの起こる機序の③だけがまだわからないという結果になりました。

わかりやすく解説すると言っておきながら、難しかったかもしれませんが… まだまだ一緒に考えていきましょう。

また、勉強してきまーす!

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2020年5月16日 (土曜日)

現在の日本の先進国として低くはない結核罹患率からBCGワクチンと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)抵抗性との関連をどう考えるか

みなさん

Yahooのニュースをつらつらと眺めていると、学者心をくすぐる、BCG接種と新型コロナ感染症(COVID-19)抵抗性との関連に疑問を呈するいい記事を見つけました。この記事では、『BCG接種をしている日本は、BCG接種を義務付けていない他の先進国よりも結核の罹患率が高く、結核菌に対する抵抗性は確実に低いと考えられるのに、BCG接種と新型コロナ感染抵抗性を関連づけるのはなぜ?』と言っています。こういう数字を出して、冷静に新型コロナ感染症との関連に疑問を投げかける記事はいいですね。ササっと調べてみると確かに現在日本は結核の中蔓延国と言われていて、先進国、特に米国と比べると結核に対する罹患率の高さがわかります。2018年には、日本国民10万人当たり結核菌に12.3人が感染し、1.8人の方が亡くなってますね… 5月9日の記事に書きましたが、新型コロナでの死亡者数より高いですね… 新型コロナでは国民が非常事態で怯えまくったのに、結核には用心なしというのも変ですね… 面白いのは、『結核統計2018年』を読むに書いてあるんですけど、外国生まれの日本の長期滞在者の罹患率が高く、30歳までの若年層では60%以上を占めているらしいです。こういう統計があると考えをまとめるのが難しいなぁ… まぁ、このことは無視して話を進めましょう。

新型コロナのような小さな小さなウイルス(大きさ50 nm前後)と違って、それより何百倍も大きなバクテリア(細菌: 大きさ10 μm前後)に対する体に備わる抵抗性の本体は、好中球やマクロファージといった食べて消化することができる自然免疫細胞なんですね。中でもマクロファージはバクテリア感染から身体を守る最も重要な免疫細胞なんですが、結核菌は、肺に侵入するとそこにいるマクロファージに感染し身を隠し、マクロファージの消化機能をストップさせ増えることができるので、自然免疫による排除も、抗結核剤や抗生剤による治療も難しくなるわけです。このように、結核は自然免疫が効果的に働かない病気なので、自然免疫を活性化させるBCG接種の結核への有効性の疑問から(重篤なアレルギーなどの副作用もたまにあるので)、日本、中国、韓国などの国を除く欧米先進諸国はBCG接種を義務付けていないわけです。

では他にどのような結核に対する生体防御機構があるかというと、T細胞による結核菌感染マクロファージの除去システムと、T細胞の助けにより活性化したB細胞から放出される特異的抗体による結核菌を殺すシステムがあります。すなわち、結核という病気の抵抗性では、自然免疫よりもT細胞を中心とした獲得免疫がより重要なんですね。ちょっと難しい話になりますが、T細胞はものすごく特異性の高い細胞なんですが、そのT細胞がある病気に対して強い感受性を示すか示さないかは、ほとんど全ての体細胞が細胞表面に持っている主要組織適合複合体(MHC: Major Histocompatibility Complex; 人ではHuman Leukocyte Antigen(HLA)と呼ばれています)というタンパク質に依存しています。このタンパク質は進化の過程で少しずつ変化しているので、欧米人と日本人では多くの人が持っている型(ハプロタイプと言います)が違います(これを多型と言います)。例えば、新型コロナ感染細胞や結核感染マクロファージでは、それぞれHLAに乗っかって出てくる新型コロナタンパク質断片や結核タンパク質断片をT細胞は認識しますが、HLAの型の違いで、出てくるタンパク質断片が異なるので、それに対するT細胞の感受性が違ってきます結核菌に対するT細胞応答の強さがHLA型により異なることはちゃんと論文で報告されています。 

ということで最初の疑問に戻りますが、日本人で結核の罹患率が高いのは、BCG接種に関係なく、欧米人の方が日本人よりも結核菌に対するT細胞応答がもともと強い可能性が高いですね。

もしかしたら、新型コロナ感染症でも、BCG接種に関係なく、日本人の方が欧米人よりも、このウイルスに対するT細胞応答が強いだけなのかもしれません… 

このブログもだんだん難しくなってますが、一緒にいろいろ考えましょうね。

また勉強してきまーす。

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2020年5月15日 (金曜日)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で、自然免疫(Innate Immunity)と獲得免疫(Acquired Immunity)はどのような活動をしているの? その2

みなさん

やっと日本の新型コロナ感染(COVID-19)も、第一波を抑え込んだと政府が判断し、緊急事態宣言が解除の方向になりましたね。まぁ私は、この新型コロナの感染が怖いなんて気持ちは無く、第二波や第三波に備えむしろ感染しておきたいなぁ〜なんて気持ちもあったりして、Stay Homeは一応してましたけど、新型コロナの情報やら文献やらを掻き集めては読み耽り、論文も書いたりして勝手に忙しかったので、『あ〜あ、第一波が終わっちゃうなぁ〜』なんて、ちょっと寂しい気持ちになってます😞。不謹慎だと怒られそうですけど、まぁ我が儘で他人の気持ちを察せない学者ですから、どうかお許しくださいね。

さて、前々回の記事では、この新型コロナ感染症の、発症から1週間目までは穏やかに進行し、その後重症化した場合に、2週間前後でサイトカインストームによる急性肺炎が起こり死に至る、という病態で、BCG接種によって活性化する自然免疫と、感染細胞を特異的に認識し強力に排除するT細胞による獲得免疫がどのような活動をしているのか、大まかですけど、確実にポイントを押さえてお伝えしました。解りにくかったですかね。まぁでも、自然免疫や獲得免疫の基本的なことは、4月からずーっと書いてきたので、解って頂いているものとして、少しずつ前々回の記事を深めていきたいと思います。

COVID-19に関する英語の論文を観ると、発症から1週間くらいまでの穏やかな時期をmoderate(穏健な)、重症化をsevere(重度)と感染者を分けて病態を観察している場合が多いです。このブログでもリンクをクリックすると英語の記事やら論文が出てきて、severe pneumonia(重症肺炎)なんて言葉がたくさん登場しますよ、読んでみてくださいね。前々回の記事の仮説が正しいかどうかは、現状では二つの論文から窺い知ることができます。一つは、① Frontiers in Immunologyという免疫学の雑誌に掲載された論文で、Download Articleを押すと論文を見ることができます。もう一つは、② Nature Medicineという有名な医学雑誌に掲載された論文です。

①の論文では、新型コロナ患者をmoderate、肺炎、重症度の度合いやICUに入ったか入らなかったかで分け、それぞれの患者血液サンプルの免疫細胞を見ています。血液サンプルですから、体全体での変化を知ることができますね。それによると、重症度が上がるにつれて、獲得免疫細胞のT細胞(サイトカインを産生するCD4という分子があるT細胞と、感染細胞を殺す役割があるCD8分子を持つT細胞について観ています)の数がどんどん減って、疲弊マーカー(PD-1分子やTIM-3分子で観ています)を持つようになること。ICUに入った感染者はIL-6のレベルが上昇するけれど、ICUに入らないで済んだ人は、IL-6レベルが上がらないことが解ります。

②の論文では、新型コロナ患者をmoderate群とsevere群に分け、健常人をコントロールに、それぞれ気管支洗浄液から免疫細胞を取ってきて、含まれた一つ一つの細胞の情報から免疫細胞を特定して解析しています。すごいですね。気管支洗浄液ですから、局所の免疫応答を知ることができますね。この論文は、獲得免疫細胞で感染細胞を殺すことができるT細胞や抗体を産生するB細胞、さらには、自然免疫細胞で感染細胞を殺す役割を持つナチュラルキラー(NK)細胞がmoderate患者では増えているが、severe患者では劇的に減ること、感染細胞やその死骸を食べ、IL-6などのサイトカインストームの原因となる炎症性サイトカインを強く産生する自然免疫細胞のマクロファージや好中球はsevere患者で増え、好中球を呼び寄せる役割があって、炎症に関係しないような自然免疫細胞のマクロファージは、moderate患者で多いこと、それに大変重要なことは、moderate患者のT細胞は感染細胞に特異的なT細胞が多くを占めていると考えられるのに対して(クローン性があるということなんですが、これについてはまたお伝えしますね)、severe患者のT細胞は、特異性が無さそうに見えること、さらには、moderate患者の細胞は炎症を調節する遺伝子の発現が高いのに対して、severe患者の細胞は、サイトカイン産生に関する遺伝子の発現が高いこと、を教えてくれます。

難しいですねぇ😖 これらの論文の解りやすい解説はまたの機会にお伝えしますね。

お楽しみに〜😵

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2020年5月13日 (水曜日)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でPCR検査で陰性になった人が、しばらくしてまた陽性になるのはどうして?

みなさん

緊急事態のコロナ禍なのに、30度を超える夏のような気温には参っちゃいますね… 😞 みなさんお元気ですか? この新型コロナ感染症では、小児に川崎病のような症状も出るということで、色々調べましたが、川崎病という日赤医療センターで勤務されていた川崎富作先生が1960年代に見つけられた有名な病気も、病因が特定されていないので(ウイルス感染や細菌感染との関連が深い可能性が指摘されているだけですね)予防ができなようです。医科学はまだまだわからないことだらけですね… 😵

ところで最近、新型コロナ感染症で、感染者が一旦PCR(Polymerase Chain Reaction)検査で陰性になったのに、しばらくしてまた陽性になるという記事をよく見かけますね。これはどうして起こるのでしょうか。

原因その1(検体採取の問題):検査するための検体は、現在は鼻腔や咽頭から採取していますが、実際にそこに新型コロナウイルスが多いのか少ないのか、感染の進行度でウイルス量はどのように変化するかなど、ウイルス動体の知見が少ない中での手探り状態で採取してるのですね。だから、5月4日の記事にも書きましたが、鼻腔や咽頭から採取した検体では、感染していると思われるのに検出されないことが多いということが徐々に判ってきたので、唾や痰でもやってみようという動きになってきているのです。

原因その2(PCR検査自体の問題):PCR検査ですが、これは新型コロナウイルスのRNAを、Reverse Transcriptaseという酵素で安定なDNAに変えた後に、ウイルスに特異的なDNA配列を使ってウイルス遺伝子を増幅させ、DNAが増幅するかしないかで、ウイルスの存在を確認する方法です。国立感染症研究所ではマニュアルを作成していて、①『2-step RT-PCR 法による2019-nCoVの定性的検出法』と②『TaqManプローブを用いたリアルタイムone-step RT-PCR法による2019-nCoVの検出』のどちらかで行うことを推奨しています。①の方法は、増幅したDNAをゲル上で電気泳動し目視で確認する方法ですので、感度が低く検査する人の判断(感覚)に大きく依存するため、ウイルスに特異的な異なる2箇所での配列の増幅が揃った場合に一応陽性という方法ですね。おそらくこの方法は、現在は使われていないのではないかと思います。②が世界中で行われている新型コロナウイルスのPCR検査法です。これは、別名『定量PCR法』や『リアルタイムPCR法』とも呼ばれ、ウイルス遺伝子の数(コピー数と言います)がわかり(すなわち何個のウイルスがいるかがわかるのです)、信頼性(感度と特異性)の高いPCR検査法として、医療や研究の分野で多用されています(余談:PCR法は、医科学研究では必須の実験法ですので、私自身①と②両方の方法を使ったことがあります。私が大学院生だった当時は、②の方法がなく①しか行えませんでした(①の方法もできたばかりの頃です)。①で行ったPCRの結果は、人生2個目の論文に載っていますが、ずいぶん昔だなぁ〜 今じゃ論文にならなかっただろうなぁ〜と思います。😞)。このように感度と特異性の高い②の方法でも問題点はあって、新型コロナウイルスが陰性だった人が実は陽性だったというケースは(偽陽性といいます)はあまりないんですが(そのほとんどは、検体取得時のミスだと言われています)、陽性だった人を陰性と判定してしまう(偽陰性といいます)ことは結構な確率(30%前後)で起こります。だからダイヤモンド・プリンセス号での感染者数が低くなったんですね。このことについては、神奈川県の医師会が、わかりやすく解説しています。また、採取した検体にウイルスが10個以下だった場合は、高確率で陰性と出てしまうものと思いますし(経験則として)、PCR機器や試薬類は色々なメーカーから出ていますが、検査をされる方の多様な機種や試薬への慣れもウイルス検査に影響すると思います。このように新型コロナ感染の検査では、PCR法だけではなく、抗体検査や抗原検査を組み合わせて、感染の有無を知ることが必要ですね。

原因その3(新型コロナに対する免疫の問題):新型コロナウイルスのような、人類にとって初めてのウイルス感染では、T細胞のような特異的で強力な獲得免疫が短期間で成立するのかどうかなど、今のところ何もわからないわけです。私は、この新型コロナ感染症で、2週間前後でT細胞によるサイトカインストームが起こっているし、獲得免疫が活動しだす1週間前後で完治する感染者が高頻度で観られるので、獲得免疫はちゃんと短期間で成立しているはずだという立場でこのブログを書いていますが、確信は持っていますが、証明はできていないわけです。この新型コロナ感染に対する免疫応答の強さは人それぞれ違うでしょうから、一旦は陰性になってまた陽性になった感染者は、獲得免疫が成立したけれど、全ての新型コロナウイルスを排除はできていなくて(PCR検査では検出できなくて陰性となった)、わずかに残ったウイルスが獲得免疫が落ち着いた後にまた増幅してPCR検査で陽性となった方もいるのではないかと思います。そもそも新型コロナウイルスといいますけど、ウイルスの名称はSARS-CoV-2なわけで、以前流行したSARSウイルス(正式名称:SARS-CoV)とそこそこ高い相同性を持つウイルスなので、最初に”初めて”と書きましたが、マスコミもよく”初めて”を使いますが、初めてではない感覚もあり(新しいインフルエンザと似た感覚ですね)、実は、以前流行のSARS感染者が今回の新型コロナ感染でどのような状況になっているかが知りたいのですけど、もしかしたら、全員無症状でウイルスに対する抗体を持っているかもしれないなぁ〜なんて思っているんですけど、まだなんの報告もありません。

また勉強してきまーす!!

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2020年5月 9日 (土曜日)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で、自然免疫(Innate Immunity)と獲得免疫(Acquired Immunity)はどのような活動をしているの? その1

みなさん

前回は疲れちゃっててすみません…😞 この新型コロナ感染症で、主だった世界の国の国民10万人当たりに一体現在死亡者が何人いるのかを計算してみました。

国名 人口(千人: 2019年) 死亡者数 人口10万人当たりの死亡者数
スペイン 46737 26299 56
イタリア 60550 30201 50
イギリス 67530 31241 46
スウェーデン 10036 3175 32
米国 329065 78200 23
ドイツ 83517 7510 9
日本 126860 606 0.5
韓国 51225 256 0.5
中国 1433784 4633 0.3

これを見ると、BCG接種を義務付けている国と、義務付けていない欧米との差が歴然ですね。そんな中、メルケル首相率いるドイツが、本当によく管理できているのがわかり、ロックダウンという都市封鎖を徹底することの重要性がおぼろげながらわかります。また、ソーシャルディスタンスなどを呼びかけただけで経済を止めなかったノーベル賞のスウェーデンも、他のヨーロッパ諸国に比べてそれほど死亡者数が多くはなく、ロックダウンするのであれば、徹底しないとダメということがわかりますし、今後経済封鎖をしない対処法を模索することの重要性が見えてきますね。私は、今回の新型コロナでのパンデミックで、スウェーデンには、死亡の大きな原因である急性肺炎の治療だけでも国策として行って欲しかったな… と思ってます。その結果がほんと見たかったです。このブログでは、今回の新型コロナ感染症への対応として、『経済を止めないで、主な死因となるサイトカインストームによる急性肺炎の治療を目指すべきだ』と訴えてきましたからね。もしスウェーデンが国策として急性肺炎治療だけを行っていて、人口10万人当たりの死亡者数が中国の0.3人を下回るなんてことになれば、経済を止める必要のない、医科学を発展させてきた人類に相応しい今後のパンデミックへの対応のモデルケースになったのに… 残念です… 😖

重症化から死亡する確率はどの国も50%弱なので、重症化率も表の順番になると思いますが、新型コロナウイルス感染症では、自然免疫を活性化するBCGの接種国で重症化しにくいという事実と共に、T細胞やB細胞による獲得免疫が未発達で、自然免疫が優位な小児では重症化が観られない(欧米で小児が川崎病のような全身血管炎症で死亡するケースが報告されていますが、日本では症例がありませんし、このことについては後で少しだけふれます。)、重症化した新型コロナ患者だけ、T細胞の優位な減少が起こる自然免疫と関連深いイベルメクチンという寄生虫薬が高い有効性を示している重症化は感染から2週間目付近(獲得免疫が優位な時期)で起こっており、感染から1週間目までは(自然免疫が優位な時期)、穏やかな病態を示し完治する事も多いという現象があります。

これらの現象から、新型コロナ感染症での病態の免疫学的機序を考えると(ここからはちょっと難しいですよ:多くの私見を含みます)、

① T細胞などの獲得免疫応答の暴走が、感染から2週間目前後で起こるサイトカインストームによる新型コロナ感染症での重症化の本体である。

自然免疫応答は、感染から7日目までは気管支や肺(局所)での新型コロナ感染細胞やウイルス自体を除去する本体であり、BCG接種をした人はこの機能が高まっている。さらに、自然免疫は、感染5日目辺りから増え始めたT細胞を中心とする獲得免疫が局所のみで活性化するように制御している。(重症化する人は、おそらくこの期間に局所における自然免疫とT細胞の監視をすり抜けて、全身で強く新型コロナ感染が進行してしまった人なのではないでしょうか。)(ほとんどの感染者がここで完治するのだと思います。小児では、T細胞などの獲得免疫が未熟なので③や④は起こりませんが、ウイルスの完全な排除はできないケースもあり、その場合に、後々川崎病のような血管での炎症が起こるのだと思います。詳細はわかりません。)

7~10日目には、新型コロナの全身での感染により、自然免疫の感染細胞除去能力、死細胞除去能力、獲得免疫制御機能がオーバーし破綻すると、感染細胞による繰り返し刺激を受けたT細胞は爆発的に増幅し、そのT細胞の攻撃による全身での大量のウイルス感染細胞の死骸と、疲弊した大量のT細胞の死骸から出てきた裸のDNA(核酸)が、短時間で全身の細胞に備わる核酸センサーを刺激する。この時、T細胞は疲弊による大量死で数を減らす。(核酸センサーを一番たくさん持っているのも自然免疫細胞なんです。自然免疫細胞は重症化しないための重要な細胞群でもあり、重症化から死亡の原因にもなる難しい細胞群ですね。)

④ 短時間で核酸センサーを強く刺激された全身の細胞は、新型コロナ感染から2週間目前後でインターロイキン(IL-6)などのサイトカインストームの原因となる生理活性物質を大量に放出し、全身での炎症反応が起こり死にいたる。

が予測されます。

自然免疫応答の重要な役割に、ウイルスなどの感染細胞の除去と死細胞の除去があります。青色部分の予測は、この新型コロナ感染症での論文報告も何もない私の勝手な憶測ですが、DNAなどの核酸は裸のまま存在すると、核酸センサーを持つ細胞(自然免疫細胞が特にたくさん持っています)を刺激し、激しいサイトカインなどの生理活性物質の産生が起こり、強い炎症を引き起こします。剥き出しの核酸は生体にとっては危ない物質ですから、通常自然免疫細胞は、死細胞をそのまま飲み込んでDNAもろとも消化したり、死細胞から細胞外小胞という膜で包まれた形で出てきたDNAを食べて消化したりして、核酸の剥き出しを防いでいます。

今回の記事は難しかったですね。まぁでも読むのが辛くても一緒に考えていきましょう。

また勉強してきまーーーす!

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2020年5月 8日 (金曜日)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とBCG接種との関連について書こうと思ったけど、疲れたのでやめました。

みなさん

まだ緊急事態渦中の日本ですが、みなさん元気で過ごされていますか? 日本の新型コロナ感染のPCR検査数が途上国並みだと憤慨し、山梨大学の島田眞路学長が検査数を増やすよう強く訴えていますね。本当にそう思います。前々回の記事に書いた既存薬の必要数を確保しようにも、病院の隔離ベット数を確保しようにも、感染者数の大まかな把握ができていないと一体どれくらい必要なのかがわかりませんね。実際にある程度正確な感染者数を出して、それを母数にして重症者率、死亡率を出さないと、前回の記事でも書きましたが、日本だけ確定症例致死率(CFR)や感染致死率(IFR)が他国に比べて異常に高く、この新型コロナ感染症が収束した時に、WHOの統計に加えてもらえないことになるかもしれませんね。『欄外(日本:感染者数の正確性を欠くため)』なんて書かれちゃいますね。まぁ日本らしいか… 島田学長は山梨大学医学部皮膚科教授をされていた頃から、私の研究に目を掛けて下さった、私の尊敬する先生で、当時から臨床や研究に並々ならぬ情熱をお持ちでしたが、現在も国のご意見番として熱いご活躍ぶりを拝見させていただき、日々エールを送っております。😃🍺

新型コロナ感染症のように、有効な治療への希求性の高い世界的なパンデミックでは、研究にしても治療にしても、日々最新の知見がドーンと出てきて、カバーしきれず少し疲れを感じています。このブログが僅かでも影響があったとしたら嬉しいですが、大方私が訴えてきた方向で既存薬による治療が始まりそうなので、そろそろ世間があまり真剣に考えていないBCG接種と新型コロナ感染症での重症化との関連だけに絞って、科学的な考察を深めようかなと考えています。何回か前での記事でも書きましたが、この関連の理論免疫学としての論文もやっと1/3くらい出来上がりました〜😞

免疫って本当に複雑な学問領域なんですよね。免疫に関わる細胞って、本当にたくさんあって(例えば新型コロナ感染症では、感染を受けた上皮細胞が警告のための免疫機構を動かす生理活性物質を出すわけで、それだって重要な初動の免疫反応といえるので、実は全ての体細胞が免疫細胞と言えなくもないわけです)、それぞれがあらゆる病態で少しずつ違った行動をしていて、その行動も時系列でまた違っていて… その時その時の局所(新型コロナ感染症だったら感染した場所のことです)やリンパ組織での免疫応答の全体像を把握して(この過程が一番重要ですね)、そこから中心となる活動を抽出し、その活動の本体を分子レベルで追求し、その繰り返しですね。でもね、面白いのは、4月14日の記事で書きましたが、こんなに複雑で重要な活動なのに、ウイルス感染を防ぐために、進化の過程でできたT細胞やB細胞による獲得免疫や、細菌などのバクテリアの感染を防ぐために、BCG接種で活性化するような自然免疫と呼ばれる免疫機構に関係する種々の遺伝子を無くしてしまっても(ノックアウトと言います)、病原体のいないきれいな環境下で生まれたり生きたりするのに何の問題も生じない場合が多いんですね(マウスの実験での話です)。何だか今回の記事はつまらないことを書いてますね。

疲れているのでごめんなさい。また勉強してきまーす……💤

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2020年5月 4日 (月曜日)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)での本当の死亡率ってどれくらいなの?

みなさん

本当に街が静かになりましたね。なんかちょっと、科学が発展してきた現代では不釣り合いというか… これでいいんだろうか… これが本当に最高の対策なんだろうか… やっぱり『Stay Home』とは別の、2020年なりの、人類の進化の歴史に相応しい対処法があるのではないか… なんて、うつらうつらと考えちゃいます。今回のこのパンデミックでも、『生物の進化はウイルス感染と共にある』『新規のウイルスに感染させておくことが、今後のパンデミックでの重要な予防になる』みたいな記事を多く目にしますね。これらの意見を踏まえて、発想を変えて、『人類の新型コロナの感染拡大を受け入れる』と世界各国が方針を変えたとしたら、やっぱり一番重要な疑問は『一体この新型コロナ感染での真の死亡率(致死率)はどれくらいなの?』であり、『死なない対策があればいいんじゃないの?』ということになります。このブログでは、死なない対策の一つとして、『新型コロナ感染では、死亡の大きな原因はサイトカインストームで起こる急性肺炎なのだから、これをなんとかしたい!』という想いで、1ヶ月前から記事を書き続けてきました。この点で深く考えていくと、いろいろな対処法がありますよ(4月の記事でいろいろ書きました、気になる方は覗いてみてくださいね)。

では、新型コロナ感染での真の致死率はいったいどれくらいなのでしょうか。まず初めに致死率ですが、簡単にいうと感染者数に対する死亡者数の割合ですね。でも感染者数は検査をしないとわからないので、そこが問題なんです。WHOは公表された全世界の感染者数と死亡者数の小学生でもできる計算で推定3.8%と言っています(今はもう少し少なく見積もられているはずです)。でもこれは確実に間違っていますね。なぜなら、真の感染者数は、全世界にいる全人数の感染の有無を検査して知らなければ出ないからです。本当の致死率はもっともっと低くなるはずです。例えば、兵庫県の神戸市では、現在265人の検査で判明した陽性者数がいて5人が亡くなっています。なので、致死率は1.9%くらいですね。でも、神戸市の病院に受診した患者の中から無作為に選んだ1000人に新型コロナウイルスに感染歴があるかどうか検討(新型コロナに対する抗体があるかどうかを検査したということです。抗体検査はまだ完璧な検査法ではないと思いますが、おおよそは把握できるはずです。)した結果、33人が抗体を持っていたと報告されましたね。これは大変重要な結果で、神戸市では実は計算上5万人くらいの人が既に感染しているということになります。だから真の致死率は感染者5万人に対する死亡者5人ですから、0.01%くらいということになりますね。WHOの致死率3.8%や神戸市の致死率1.9%は確定症例致死率(CFR: Case Fatality Rate)、神戸市の計算上の真の致死率0.01%は感染致死率(IFR: Infection Fatality Rate)と言って、真の致死率は、ある程度大きな母集団で検査をして、計算上で値を求めることになります。

ダイヤモンド・プリンセス号という豪華旅客船で新型コロナ感染が起こり、横浜での停泊中に、乗客や乗務員が隔離される事態になりましたが、このケースでは、乗客乗員合わせて3711人乗っていて、全員が抗体検査を除くあらゆる検査を受けたので、新型コロナによる真の致死率を求めるための、重要な知見を我々に提供してくれています。意外に感染者数が少ないんだなぁ〜と思いますが、現在、712人の感染がPCR検査で判明していて、13人の方が亡くなっています。ですから、CFRは1.8%です。神戸市のCFRとあまり変わりませんね。抗体検査だけはされていないのですが、乗客乗員全員が何かしら新型コロナウイルスとの接触はあると思うので、もし抗体検査で全員が感染履歴をもつと仮定すると、IFRは0.35%ですね。PCR検査は陰性となる率が高いように感じます。船上での隔離感染と市中感染ではウイルス密度が圧倒的に違うでしょうし、豪華客船の乗客は圧倒的に高齢者が多いので、ダイヤモンド・プリンセス号でのCFRとIFRは高く見積もられた結果と解釈できます。みなさんもご存知だと思いますが、科学雑誌の最高峰に『nature』があり、そのニュースで、ダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナ感染に関する記事が乗りました。その記事の中で、ダイヤモンド・プリンセス号での貴重なデータと、中国での膨大な感染者数と死亡者数のデータから、この新型コロナ感染の中国でのCFRとIFRを求める論文があることを知り見てみました。それによると、CFRはおおよそ1.1%でIFRはおおよそ0.5%です。

100年前のスペイン風邪では、CFRは2.5%以上と算出されています。でもこの時もアジアではCFR 0.1%と考えられています。新型コロナ感染では、将来的にはおおよそCFRは1.5%-2%となり、IFRは0.5%-0.01%と計算されるのではないかと思います。100年前とは違う現在、処方できる薬は数多く存在します。私は、この程度の致死率なら、急性肺炎に注目するなど、死なない治療だけを目指しても良いのではないかと感じています。経済を止めず、医療崩壊を起こさず、高齢者を不安にさせない治療ですね。それにしても、スペイン風邪では、肺炎が死亡の大きな原因と言われていますが、やはりアジアでの死亡率は低いですね。スペイン風邪の頃にBCG接種はされていませんから、アジア人はもともと肺炎に強い人種なのかなぁ〜

科学的に面白いこといっぱいですね。また情報をつかんできま〜す!

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2020年5月 2日 (土曜日)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療では、だんだん有効な既存薬が見つかってきましたね。BCGとの関連についても考えた。その5を含む。

みなさん

相変わらず新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染症(COVID-19)での新しい知見に敏感な私です。人間が経験したことのない新しいウイルスによる感染症から、まだ解き明かされていない生体防御(免疫)の基本的な仕組みを科学的に知ろうと思ったら、処方できる薬がほとんどない第一波と呼ばれているこの時期に必死になって情報を集めることが重要ですね。ある程度効果がある処方薬が出てくると、このウイルスの感染症で起こるいろいろな現象や統計解釈が複雑になってダメなんですね。滅多にない全世界規模での実験のような(不謹慎な言い方ですがお許しください)このパンデミックの初期に、必死に勉強しない医科学者がいたとしたら、その人は科学者としては失格ですね。

世界中が既存薬の治験を開始していて、この頃どんどん効果が期待できる治療薬が報告されるようになりましたね。いい傾向です。このブログでは、新型コロナ感染で死にいたるほとんどのケースがサイトカインストームによる急性肺炎なので、インターロイキン(IL)-6というサイトカインストームの中心として働く生理活性物質の炎症作用を阻害する、部分的ヒト化抗体トシリズマブ(Tocilizumab: 日本の薬 中外製薬の製品名はアクテムラ)、同様の作用で、完全ヒト化抗体のサリルマブ(Sarilumab: フランスのサノフィ社の製品名はケブラザ)の使用が、死亡率の劇的な低下に有効だと考え推してきました。その他に、報告されている有力な治療薬ですが。アビガン(Avigan: 日本の薬)は既存薬のない新規のインフルエンザ薬として承認されていて、インフルエンザの複製に関与するRNAポリメラーゼ(合成酵素)を選択的に阻害するので、新型コロナウイルスもRNAウイルスなので、アビガンが効く理由がわかりますね。レムデシビル(Remdesivir: 米国の薬)は感染細胞内で新型コロナウイルスが複製(新たにコピーとして作られる)の際に合成するRNAに取り込まれて偽RNAが合成されることでウイルスを不活化させるプロドラックと呼ばれるものですね。エボラ出血熱の治療で認可された薬なんですが、米国での新型コロナ感染症での有効性が明らかになってきたので、未承認だった日本でも承認手続きを進めているようですね。いい傾向です。

アビガンとレムデシビルはどちらも新型コロナウイルス自体を標的とする既存薬ですね。これらの他に、治験がされて効果があったのに、なんで効果があるのかなぁ〜と皆が不思議に思う候補既存薬として、イベルメクチン(Ivermectin: 万有製薬での製品名ストロメクトール)という薬があります。この薬の開発を含めた業績でノーベル医学生理学賞を受賞された大村智先生も驚かれているようですが、このイベルメクチンは抗寄生虫薬なんですよ。面白いですねぇ〜 イベルメクチンは、人の神経系にはほとんど作用せず、寄生虫や節足動物の神経に作用し、神経を麻痺させて死滅させる作用をもつ薬で、治験の成績を米国のユタ大学のチームが統計処理をし、その結果から、新型コロナ感染者の死亡率も重症化した群の死亡率も劇的に低下させ作用が明らかになりました私はね、大変この薬に注目しています。なぜかというと、現在の若手の免疫研究者のほとんどの人は詳しく知らないと思うのですが、寄生虫はものすごく自然免疫と関連性が深いんですね。マラリアという蚊(ハマダラカ)に媒介されて起こる寄生虫病で、多くの研究報告があります。寄生虫に作用するイベルメクチンが、サイトカインストームが起こらないように自然免疫を調節しているのであれば、自然免疫を動かすBCGの接種を義務化している国で、新型コロナ感染による重症化率と急性肺炎による致死率が低いのも、同様の機構で説明できるかもしれないのですね。今後の基礎研究が期待されますね。やはり何を見ても、新型コロナの感染症での病態解明では、自然免疫が重要なキーワードとして浮上してきます。いやーほんと面白いですねぇ〜

また勉強してきま〜す!

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